映像で伝える「地元愛」
ICTビジネス研究部
「四国三郎」の愛称で親しまれる吉野川の中流域に,つるぎ町はある。流れに沿って延びる国道192号脇にある道の駅「貞光ゆうゆう館」の展望塔から南を眺めると,西日本第2の高峰・剣山(1955㍍)をかすかに望むことができる。県立つるぎ高校は,道の駅から歩いて数分のところにある。今年4月,ここにあった貞光工業高校と,隣の美馬市にあった美馬商業高校が統合した学校だ。
放課後になると,27台のパソコンが並ぶ教室に,部員30人が集まってくる。ICT(情報通信技術)を使って映像を制作,地域の情報を発信することが主な活動だ。
10月下旬,部員たちはドラマ仕立てで地元の観光地を紹介する映像の仕上げ作業をしていた。作品のタイトルは「藍から始まる愛」。舞台は,つるぎ町に隣接する美馬市脇町。祖父の家を訪ねた都会育ちの女子高生が道に迷い,地元の男子高校生に案内してもらううちに,脇町の魅力に気付くという筋立てだ。
藍染めの原料の藍を商って栄えた伝統的な街並みや,山田洋次監督の映画「虹をつかむ男」の舞台となった劇場「オデオン座」などを背景に物語りは展開する。
脚本と監督は部長で商業科3年の清田紗希さん(18)が担当し,出演や撮影,録音などすべて部員がこなした。
「私たちが暮らす地域の素晴らしさが伝わるように,みんなで考えながら映像を作りました。テレビのCMなども参考にしました」と清田さん。撮影を担当した電気科1年の三宅優大さん(16)は「登場人物や風景がうまく写るようにカメラ位置などに気を使った」と振り返る。
このドラマと並行して,地元の伝統工芸の美馬和傘を作る全行程を撮影し,15分間にまとめた記録映像も制作した。10月31日,この2本を徳島県主催のデジタル作品コンテスト「ICT(愛して)とくしま対象」に応募した。年内には結果が発表される。
脇町に残る「うだつ」という袖壁がある古い建物を,一軒ずつ撮影した約1時間の長編も編集中だ。観光ボランティア育成のための教材映像で,美馬市と学校が結んでいる,観光に関する連携協定に基づくプロジェクトとして取り組んでいる。
「うだつの種類や構造,町並みの歴史について,この映像を見れば観光客の質問に答えられるような内容を目指しています」と,副顧問の大久保友博さん(29)は抱負を語る。「映像で地域を元気に」という部員たちの思いが込められた作品になりそうだ。